下記の文章はGlyphs3ハンドブックを個人的に日本語に訳したもので、内容には誤訳を含む可能性もあります。誤訳により生じた一切の責任については負いかねますので予めご了承ください。 参考サイト:Glyphs3 Handbook(PDF)、Glyphs2.3ハンドブック日本語版(PDF)、Glyphs Handbook(WEB)、Microsoft Typography documentation、CSSでのOpenType 機能の構文
第1章 Glyphs 第2章 作成 第3章 環境設定 第4章 編集ビュー 第5章 パレット 第6章 フィルタ 第7章 フォントビュー 第8章 フォント情報 第9章 図形の再利用 第10章 スペーシングとカーニング 第11章 PostScriptヒンティング 第12章 TrueTypeヒンティング 第13章 マルチプルマスター 第14章 カラーフォント 第15章 読み込みと出力 第16章 拡張機能 第17章 補足資料(作成中)
15.1 フォントファイルの出力
ファイル → 出力…(Cmd–E)を選択すると、現在開いているGlyphsファイルの出力ダイアログが表示されます。また、Optionキーを追加してファイル → すべて出力(Cmd–Opt–E)を選択すると、開いているすべてのGlyphsファイルを、出力ダイアログを表示せずに一度に出力できます。なお、出力されたファイルは既存のファイルを上書きしますので注意が必要です。
出力ダイアログにはさまざまな出力フォーマットが用意されています。これらについては、以下の項目で説明します。
15.1.1 OpenTypeフォントの出力
「OTF」タブは、OpenTypeフォントを出力するためのタブです。この出力オプションでは「フォント情報」の「出力スタイル」で設定された静的インスタンス(13.4.1「静的インスタンス」参照)を使用してOpenTypeフォントを作成します。インスタンスが何も設定されていない場合は、一番先頭のマスターに基づいたデフォルトのインスタンスが使用されます。
アウトライン方式
OpenTypeフォントには2つのアウトライン方式があります。これらの主な違いは、グリフのアウトライン方式です。
- PostScript/CFF方式のファイル:
- グリフのアウトラインを3次ベジェ曲線として格納するCFF(Compact Font Format)テーブルがファイル内に含まれています。
- 拡張子は「.otf」が一般的です。
- TrueType方式のファイル:
- グリフのアウトラインを2次ベジェ曲線として格納するglyfテーブルと、TrueTypeフォーマットに関連するその他のテーブルがファイル内に含まれています。
- 拡張子は「.ttf」が一般的です。
「PostScript/CFF」または「TrueType」のどちらかを選択します。通常、Glyphsで作成するパスは3次ベジェ曲線ですが、2次ベジェ曲線のパスも編集可能です。「TrueType」を選択して出力する場合、Glyphsは3次ベジェ曲線から2次ベジェ曲線を生成します。この変換によって、元のグリフと出力されたグリフのアウトラインに若干の違いが生じることがあります。
また、パス以外にも、2つの形式ではヒンティングの方法も異なります。詳細は第11章「PostScriptヒンティング」と第12章「TrueTypeヒンティング」を参照してください。さらに、TrueType方式で出力する場合、コンポーネントをアウトラインに変換せずに保持することができます。詳細は9.1「コンポーネント」を参照してください。
ファイル形式
「.otf」や「.ttf」形式のファイルは、一般的にコンピュータのオペレーティングシステムにフォントをインストールし、グラフィックデザインやワードプロセッサーなどのアプリケーションで利用する際に使用されます。「.woff」と「.woff2」形式のファイル(これらはWeb Open Font Formatの略称です)は、ウェブ上でフォントを利用する際に使用されます。出力したいファイル形式すべてにチェックをつけてください。
オプション
「重なったパスを合体」オプションは、グリフレイヤー内の全てのパスとコンポーネントを統合し、重なっている部分を除去します。これは「パス」→「重なったパスを合体」と同じ操作です。詳細は6.2.10 「重なりの除去」を参照してください。
フォントをリリースする際にはこのオプションをオンにして出力するべきですが、開発段階でより高速な出力を求める場合や、カスタムパラメータですでに「重なりの除去」フィルタを適用している場合は、このオプションをオフにして出力する場合も考えられます。
「すべてのグリフをオートヒント」オプションをオンにすると、オートヒントが適用されます。アウトライン方式でPostScript/CFF方式を選択した場合、手動でPostScriptヒントが設定されていない全てのグリフにオートヒントが適用されます(11.2「オートヒント」参照)。TrueType方式の場合、オートヒントはフォント全体に適用され、手動で追加されたTTヒントは無視されます(12.1「オートヒント」参照)。
出力先
出力先の選択項目には、2つの出力先が用意されています。
- ファイルパスの横にあるチェックボックス:
- ファイルパスの横にあるチェックボックスを選択すると、そのフォルダーにフォントが出力されます。
- 別のフォルダーを選択したい場合は、ファイルパスをクリックして、表示されるダイアログから新しいフォルダーを選択します。
- よく使用される出力先としては、以下の2つがあります。
- システムのフォントライブラリ([ユーザー名] →ライブラリ→Fonts)
- AdobeのFontsフォルダ([ユーザー名]→ライブラリ→Application Support→Adobe→Fonts)があります。
- テストインストールのチェックボックス
- テストインストールのチェックボックスを選択すると、フォントファイルを出力せずにフォントを直接Macにインストールできます。
- テストインストールではフォントデータがMacのフォントシステムに直接書き込まれます。
- テストインストールされたフォントは、Pages、Final Cut、PixelmatorなどのシステムフォントフレームワークのCore Textを使用するアプリケーションで利用できますが、AdobeやAffinityなどのアプリケーションでは利用できません。
- 再起動をした場合は再度テストインストールをする必要がありますが、多くのフォントキャッシュの問題を回避することができます。
「次…」ボタンをクリックすると、選択した出力先にフォントファイルが出力されます。どちらの出力先もチェックされていない場合は、保存先フォルダーを選択するダイアログが表示されます。
出力先は、ファイル → フォント情報… → 出力スタイル で「Export Folder(出力フォルダ)」というカスタムパラメータを追加することで、インスタンスごとに出力先をカスタマイズできます。インスタンスは選択した出力先の、カスタムパラメータで設定したフォルダに出力されます。出力フォルダにはスラッシュ (‘/’) を含めることができ、入れ子のフォルダ構造 (例:Trial Versions/Webfonts) で出力することもできます。出力フォルダを出力先の外側に設定するには、2 つのドット(../)を使ってフォルダの階層を上げます(例:../Trial Versions)。
15.1.2バリアブルフォントの出力
「バリアブルフォント」タブでは、OpenType形式のバリアブルフォントを出力できます。この出力オプションは、バリアブルフォントの設定(13.1.2「バリアブルフォント設定」参照)を使用します。設定がない場合は、デフォルトのバリアブルフォント設定が適用されます。
「OTF」タブのように、希望のファイル形式と書き出し先を設定します。バリアブルフォントのパスは常にTrueType方式で書き出されます。
15.1.3 UFOファイルの出力
「UFO」タブでは、選択したマスターをUFO(Unified Font Object)ファイルとして出力できます。マスターリスト内のマスター名をCmdを押しながらクリックすると、UFOファイルに出力する1つまたは複数のマスターを選択できます。Shiftキーを押しながらクリックして範囲を選択するか、「編集」→「すべて選択」(Cmd–A)ですべてのマスターを選択することもできます。
「デザイン用グリフ名を製品用名に変換」をチェックすると、Glyphsで使用されているデザイン用グリフ名(Nice Name)ではなく、グリフの製品用名(Production Name)を使用してUFOファイルを出力します。このオプションは、製品用名を要求するツールでUFOファイルを扱う場合に役立ちます。デザイン用グリフ名(Nice Name)と製品用名(Production Name)の違いについては、7.3.1「グリフ名」を参照してください。
「Glyphs専用機能を使ったパスを分解」をチェックすると、スマートコンポーネントやコーナーコンポーネントなどのGlyphs特有の機能が使用されている形状を、通常のパスに変換して出力します。UFOフォーマットではこれらのコンポーネント機能をサポートしていないため、このオプションをチェックしてコンポーネントを通常のパスに変換するか、チェックを外してコンポーネントを削除するかを選択してください。
「次…」をクリックして、出力先を選択します。UFOファイルは、UFOバージョン3のフォーマットで書き出されます。UFOファイルの詳細については、15.2.3「Unified Font Object」を参照してください。
15.1.4 メトリクス情報の出力
「メトリクス」タブでは、現在選択しているマスターのフォントメトリクスを出力します。(4.13.2「マスターのプレビュー」参照)。
「次…」をクリックして、出力先と出力形式を選択します。選択できるメトリクス形式は2種類あります。
- メトリクスファイル:Glyphs独自のメトリクス形式で、マスターのすべてのスペーシングとカーニングの情報を含んでいます。
- AFMファイル(Adobe Font Metrics):他のフォントエディタと互換性のある、古い形式のファイルです。すべての種類のメトリクス情報を含めることはできず、例えばグループカーニングやメトリックキーには非対応です。
これらのメトリクスファイルをGlyphsファイルにインポートする方法については、15.4.2「メトリクスデータの読み込み」を参照してください。
15.2 Glyphsデータのファイル形式
Glyphsデータは、3種類のソースファイル形式のうちのいずれかで保存できます。プラグインを使用すると、追加のソースファイル形式にも対応できます。詳細は16.3「プラグイン」を参照してください。
ファイル → 名前を付けて保存… (Cmd–Shift–S) でGlyphsデータ保存するときに、ファイルの形式を選択します。各形式については以下のセクションで説明します。
15.2.1 Glyphsファイル
Glyphsファイル形式は、新しいGlyphsファイルを作成する際のデフォルトの形式です。Glyphsファイルの末尾には「.glyphs」という拡張子が付きます。Glyphsファイルはフラットな構造で、フォントに関するすべての情報が1つのファイルに格納されます。
Glyphsのバージョン2で作成されたファイルをGlyphsのバージョン3で編集すると、Glyphs2との互換性を保ったバージョン2形式でファイルが保存されます。このため、Glyphs3での編集後もファイルをGlyphs2で開くことができます。ただし、Glyphs3のすべての機能をGlyphsバージョン2形式のファイルに保存できるわけではありません。ファイル → フォント情報… → その他 の「保存形式」で、「ファイル形式のバージョン」を「バージョン3」に変更することで、バージョン3形式のファイルを作成することができます。詳細は8.5.6「ファイル形式のバージョン」を参照してください。
Tips: .glyphsファイルは、NeXTSTEP形式のプロパティリストとして保存されます。この形式のファイルはテキストエディタで開いて、高度な編集や確認を行うことができます。
15.2.2 Glyphsファイルパッケージ
Glyphsファイルパッケージ形式は、Glyphsファイル形式が1つのファイルであるのに対し、フォントの各部分を個別ファイルに分割し、それらのファイルを「.glyphspackage」フォルダにまとめた形式です。特徴的なのは、各グリフがそれぞれ個別のファイルとして保存されている点です。
Finderでは、.glyphspackageフォルダは通常のファイルのように表示され、ダブルクリックで開くことができます。.このフォルダの内容を確認するには、Finderで.glyphspackageファイルを右クリックし、コンテキストメニューから「パッケージの内容を表示」を選択します。
通常のGlyphsファイルでは、1つのグリフが変更されただけでもファイル全体を保存し直す必要があります。しかし、Glyphsファイルパッケージ形式では、各グリフが個別のファイルに分割されているため、保存時には変更されたファイルだけが更新されます。この違いは小規模なフォントではあまり重要ではありませんが、多くのグリフを含むプロジェクト(例えばCJKフォント)ではGlyphsパッケージ形式が役立ちます。
また、各グリフを個別のファイルに分割することは、Gitなどのバージョン管理システム(VCS)でドキュメントを管理する際にも有効です。頻繁に変わる編集ビュータブのグリフ表示文字列の情報は、パッケージ内のUIState.plistファイルに保存されるため、VCSでユーザーインターフェースの変更を無視して管理することができます。
15.2.3 Unified Font Object
UFO形式は、Glyphsのソースファイル形式としても出力形式としても利用できます(15.1.3「UFOファイルの出力」参照)。ただし、UFOをGlyphsのソースファイル形式として使用する場合はGlyphsのすべての機能がサポートされているわけではありません。サポートされていない機能を有効にすると警告メッセージが表示されます。
GlyphsはUFOバージョン2およびバージョン3形式のファイルの読み込みと保存をサポートしています。UFOファイルを開いて編集する場合は開いた時のバージョンを維持します。UFOファイルの出力を利用して作成した新しいUFOファイルは、バージョン3形式で作成されます。
UFOファイルの拡張子は「.ufo」です。Glyphsパッケージと同様に、実態はフォルダですがFinder上では通常のファイルのように表示されます。GlyphsファイルやGlyphsファイルパッケージとは異なり、UFOにはマスターが1つだけ格納されます。
UFOファイルは、多くの他のフォント開発ツールと互換性があります。他のUFO互換ソフトウェアを使用する人と共同でフォントを作成する場合はUFOファイルを使用してください。ただし、特定の目的のツール(例えばカーニング専用ツール)でUFOを使用したい場合は、GlyphsファイルやGlyphsファイルパッケージで作業し、UFO形式に出力することを検討してください。出力したUFOファイルを専用ツールで編集した後は、その結果をGlyphsファイルにインポートすることができます(例えばメトリクスのインポート(15.4.2「メトリクスデータの読み込み」)など)。
ファイル読み込み時の設定オプションについては15.3.1「フォントファイルの読み込み時の動作」を参照してください。特定のUFOファイルに対してこれらのオプションを設定するには、「ファイル」→「フォント情報…」→「その他」で設定します。8.5.3「カスタムのグリフ名を使用」や、8.5.4「コンポーネントの自動整列を解除」を参照してください。
15.3 既存のフォントファイルを開く
Glyphsは以下の形式のコンパイル済みフォントファイルを開くことができます。
- OpenType、PostScript/CFF方式(.otf)
- OpenType、TrueType方式(.ttf)
- OpenTypeコレクション、TrueType方式(.ttc)
- Adobe Type 1、PostScript Font Binary(.pfb)
Glyphsはコンパイル済みフォントファイル内のすべての情報を再現することはできません。そのため、これらのファイルを開いて再度出力すると、元のファイルとは異なるフォントファイルが生成されます。例えば、ヒンティング情報やOpenTypeテーブルの一部は、コンパイルされたフォントを読み込む際に失われます。コンパイルされたフォントは閲覧専用モードで開かれます。「ファイル」→「名前を付けて保存…」(Cmd–Shift–S)を選択して、ソース形式のいずれかを選択して保存します(15.2「15.2 Glyphsデータのファイル形式」参照)。
15.2「Glyphsデータのファイル形式」で説明したように、ソースファイル形式のデータ(’.glyphs’, ‘.glyphspackage’, ‘.ufo’)で作業することを推奨します。
グリフの順序は、「ファイル」→「フォント情報…」→「フォント」のカスタムパラメータ「glyphOrder」に書き込まれます。プラグインを使用して追加のフォント形式のサポートを追加することも可能です。詳細は16.3「プラグイン」を参照してください。
15.3.1 フォントファイルの読み込み時の動作
フォントファイルを開く際に、Glyphsは内蔵の命名規則を適用して、複合グリフのメトリクスをベースグリフと同期させようとします。これらの動作はアプリケーションの環境設定で無効にすることができます。詳細は3.3「ユーザー設定」の「取り込んだファイルのグリフ名を保持する」および「取り込んだファイルの自動整列を無効にする」を参照してください。
15.3.2 TrueTypeフォントを開く
TrueType方式のOpenTypeフォントは、2次ベジェ曲線を保持したままGlyphsに読み込まれます。Glyphsでは2次ベジェ曲線の編集は可能ですが、新規に2次ベジェ曲線を作成することはできません。「パス」→「その他」→「3次ベジェに変換(PostScript)」を使用することで、これらをPostScript/CFF形式の3次ベジェ曲線に変換できます。このコマンドは選択されているすべてのパス、レイヤー、またはグリフに適用されます。TrueTypeフォントに含まれるコンポーネントは保持されます。
15.3.3 複数のフォントファイルを1つのGlyphsファイルに読み込む
フォントをマスターとして読み込むには、「ファイル」→「フォント情報… 」→「マスター」→「+ボタン」→「他のフォントを追加」の順に選択します。詳しくは8.2.1「マスターの管理」を参照してください。新しく追加したマスターに補間が設定されている場合は、それらに互換性があることを確認してください(13.5「アウトラインの互換性」参照)。
15.3.4 OpenTypeフィーチャーの読み込み
コンパイルされた OpenType ファイルを開いた場合、一部のOpenTypeフィーチャーが再構築できないことがあります。「ファイル」→「フォント情報…」→「フィーチャー」で表示されるフィーチャーのリストに、インポートすべきフィーチャーが表示されます。複数のフィーチャーで使用されているルックアップは「Prefix」という名前のプレフィックスに配置されます。カーニングやカーニンググループはほとんどの場合そのまま維持されますが、文脈に応じたカーニングは維持されません。
15.3.5 PostScriptヒンティングの読み込み
ほとんどのグリフレベルのPostScriptヒントは保持されます。アライメントゾーンや標準ステムも保持されます。ただし、ほとんどのグリフレベルのヒントはノードに接続されなくなります。マルチプルマスターの設定では、ヒントに合うアウトラインノードに青い丸のマークや青い三角のマークをドラッグして配置してください。詳しくは11.3.1「ステムのヒント」を参照してください。
15.4 フォントデータの読み込み
15.4.1 アウトラインデータの読み込み
「ファイル」→「読み込み」→「アウトライン…」を選択すると、PDF、EPS、SVGファイルをアウトラインとして読み込むことができます。フォントビューでは、複数のファイルを選択し、一致する名前のグリフにインポートすることができます(例:A.pdfをAに、comma.svgをcommaにインポートする)。対応するグリフが存在しない場合は、新しいグリフを作成するか、そのファイルを無視するかを選択するダイアログが表示されます。
「OK」をクリックするとそのファイルはスキップされます。
「グリフを追加」をクリックすると、ファイル名と同じ名前の新しいグリフをフォントに追加し、そのグリフにアウトラインをインポートします。
編集ビューで「ファイル」→「読み込み」→「アウトライン…」を選択すると、現在のグリフに選択したファイルのアウトラインがインポートされます。
ファイルに保存されているベクターパスはグリフのアウトラインとしてインポートされます。アウトラインのみが保持され、塗りつぶしの色やその他のスタイルは破棄されます。PDFファイルの場合、ストロークの太さはストロークスタイルとしてインポートされます。
アウトラインをコピー&ペーストでインポートする方法については、15.5「ベクター描画アプリケーション」を参照してください。
15.4.2 メトリクス情報の読み込み
Glyphsは、マスターのスペーシングとカーニングを、メトリクスファイルおよびAFMファイル(どちらもGlyphsで出力可能、15.1.4「メトリクス情報の出力」参照)、および GlyphsとUFOファイルからインポートすることができます。
フォントビューで、「ファイル」→「読み込み」→「メトリクス…」を選択すると、現在開いているGlyphsファイルにメトリクスをインポートできます。ファイルを選択して「インポート」をクリックすると、インポートダイアログが表示されます。
選択したファイルに応じて、右の2つのインポートダイアログのいずれかが表示されます。
左:「メトリクスファイル」または「AFMファイル」
右:「Glyphsファイル」または「UFOファイル」
カーニング値やカーニングクラスをインポートするかどうかを、それぞれのチェックボックスで選択します。Glyphsファイルからメトリクスをインポートする場合、カーニング値はサポートされません。Glyphsファイルから別のGlyphsファイルにカーニング値をインポートするには、カーニングウィンドウ(「ウィンドウ」→「カーニング」、Cmd–Opt–K、詳細は10.2.6「カーニングウィンドウ」参照)でコピー&ペーストしてください。
メトリクスファイルまたはAFMファイルからのインポートでは、カーニングに加えてグリフのメトリクスの設定が可能です。「メトリクスを読み込む」をチェックすると、4つのインポートモードの中から1つを選ぶことができます。
- 左サイドベアリング+グリフ幅:左サイドベアリングと幅をインポートし、右サイドベアリングを調整します。
- グリフ幅+右サイドベアリング:右サイドベアリングと幅をインポートし、左サイドベアリングを調整します。
- 左+右サイドベアリング:左右のサイドベアリングをインポートし、幅を調整します。
- グリフ幅(中央):幅をインポートし、アウトラインを中央に配置します(サイドベアリングを均等にします)。
メトリクス値が自動調整から得られる値と異なるコンポーネントについては、「コンポーネントの自動整列を維持」がチェックされていない限り、自動調整は無効になります。メトリクスは、デフォルトではすべてのグリフに対してインポートされます。「選択したグリフ」をチェックすると、選択されたグリフに対してのみメトリクスがインポートされ、何も選択されていない場合はすべてのグリフに対してインポートされます。
15.4.3 フィーチャーデータの読み込み
「ファイル」→「読み込み」→「フィーチャー…」を選択すると、AFDKOフィーチャー言語で書かれたOpenTypeフィーチャーをインポートできます。「.fea」で終わるファイルを選択して「読み込み」をクリックすると、ファイルに含まれているフィーチャーが「ファイル」→「フォント情報…」→「フィーチャー」に追加されます。OpenTypeフィーチャーの詳細については、8.4「フィーチャー」を参照してください。
15.5 ベクター描画アプリケーション
Glyphsは、ほとんどのベクター描画アプリケーションからアウトラインを貼り付けることができます。貼り付けられたアウトラインがグリフボックスの外に大きくはみ出す場合がありますが、Glyphsはそのような状況を検出し、貼り付けたアウトラインの境界を修正することができます。
以下のセクションでは、特定のアプリケーションに対する推奨設定を説明します。
15.5.1 Adobe Illustrator
ベクターアウトラインは、Illustratorからコピー&ペーストでインポートできます。最良の結果を得るためには、1ポイントが1フォントユニットに対応するように、Illustratorのアートボードを設定してください。1000UPMのフォントは、1000ポイントの高さのアートボードにマッピングされます。
Illustratorで閉じたパスをコピーし、Glyphsで「編集」→「ペースト」(Cmd–V)を使って現在のグリフに貼り付けます。フォントのグリッド間隔がゼロでない限り、ノードの座標数値は丸められます。
ヒント:大文字の高さに合わせてスケールを正確に設定するには、Glyphsで大文字の高さの長方形を描き、それをコピーしてIllustratorのアートボードに貼り付け、描画を長方形の高さに合わせて拡大縮小します。
15.5.2 Affinity Designer
Affinity Designerでは、アートボードのどこにアウトラインが配置されているかに関わらず、コピーされたアウトラインを原点(0, 0)に配置します。Glyphsは標準のアウトラインコピーモードと、SVGモード(「Affinity Designer」→「設定…」→「一般」→「アイテムをSVGとしてコピー」→「SVG」)の両方をサポートしています。
15.5.3 Sketch
Sketchでは、輪郭を塗りつぶしなしの1ptのアウトラインに設定してください。これにより、Glyphsでアウトラインが二重になることを防ぐことができます。
15.6 ファイル形式の互換性
他のフォントエディタとファイルを相互運用する場合は、一般的にUFO形式が使用されます。詳細については15.2.3「Unified Font Object」を参照してください。
FontLab 7は、Glyphsファイルを直接インポートおよびエクスポートできます。そのため、UFO形式ファイルでやりとりするよりも、より詳細な互換性を保つことができます。
FontLab Studio 5を使用する場合は、Glyphs ImportおよびGlyphs Exportマクロを使用します。これらをFontLab Studio 5にインストールするには、Finderを開いて「移動」→「フォルダへ移動」を選択します。FontLab Studio 5のマクロフォルダのパス(~/Library/Application Support/FontLab/Studio 5/Macros/)を入力し、Returnを押します。そこに2つのマクロファイルを配置し、FontLab Studio 5を再起動します。マクロはマクロツールバーで利用できるようになります。
その他のフォントエディタでは、すべてのGlyphsの機能がサポートされているわけではありません。したがって、ファイルを相互にやりとりすることで、データが簡略化されたり(例:アウトラインが分解されるなど)、フォント情報が欠落したりすることがあります。安全のため、元のオリジナルのGlyphsファイルのコピーを保管するようにしてください。
15.7 プロジェクト
プロジェクトとは、Glyphsフォントファイルにリンクされたインスタンス定義のコレクションのことで、プロジェクトファイルとして別個に保存することができます。これは、元のGlyphsファイルを変更したりせずに、異なるフォントバージョンを設定するのに便利です。プロジェクトファイルは.glyphsprojectという拡張子を持ちます。
15.7.1 プロジェクトのセットアップ
「ファイル 」→「新規プロジェクト」で、新規Glyphsプロジェクトを作成します。「ファイル」→「保存」(Cmd–S)で作成したプロジェクトを保存します。
プロジェクトウィンドウの右上にある[選択]ボタンをクリックしてGlyphsファイルを選択し、[選択]ボタンを押します。選択するフォントはGlyphs上で開いている必要はありません。これにより、Glyphsファイルがプロジェクトにリンクされます。ファイルパスをクリックして、別のGlyphsファイルを選択することもできます。フォントのインスタンスがプロジェクトウィンドウのサイドバーに一覧表示されます。
インスタンスはドラッグ&ドロップで並べ替えることができます。Optionキーを押しながらドラッグすることでインスタンスを複製できます。また、コピー(Cmd–C)とペースト(Cmd–V)を使用して選択したインスタンスを複製できます。[+]ボタンで新しいインスタンスやバリアブルフォント設定を追加し、[−]ボタンで選択したインスタンスを削除します。回転矢印のボタンで、元のGlyphsファイルのインスタンスに戻すこともできます。
プロジェクトウィンドウの右半分で、インスタンスのパラメータを編集します。詳細は8.3「出力スタイル」を参照してください。
15.7.2 プロジェクトの出力
プロジェクトが保存されていること(「ファイル」→「保存」、Cmd–S)と、リンクされたフォントへのパスが有効であることを確認します(リンクされたファイルが名前変更、移動、削除された場合、パスは無効になります)。画面下の出力先のファイルパスをクリックして、出力フォルダを設定します。インスタンスはこのフォルダーに出力されます。インスタンスの出力フォルダをカスタマイズするには、カスタムパラメータ「Export Folder」を使用します(15.1.1.4「出力先」参照)。プロジェクトウィンドウの右下にある「出力」ボタンをクリックして、設定したすべてのインスタンスを出力します。出力時にリンク先のGlyphsファイルを事前に開いておく必要はありません。
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