下記の文章はGlyphs3ハンドブックを個人的に日本語に訳したもので、内容には誤訳を含む可能性もあります。誤訳により生じた一切の責任については負いかねますので予めご了承ください。 参考サイト:Glyphs3 Handbook(PDF)、Glyphs2.3ハンドブック日本語版(PDF)、Glyphs Handbook(WEB)、Microsoft Typography documentation、CSSでのOpenType 機能の構文
第1章 Glyphs 第2章 作成 第3章 環境設定 第4章 編集ビュー 第5章 パレット 第6章 フィルタ 第7章 フォントビュー 第8章 フォント情報 第9章 図形の再利用 第10章 スペーシングとカーニング 第11章 PostScriptヒンティング 第12章 TrueTypeヒンティング 第13章 マルチプルマスター 第14章 カラーフォント 第15章 読み込みと出力 第16章 拡張機能 第17章 補足資料(作成中)
5 パレット
ウィンドウの右上にあるサイドバーボタンでパレットのサイドバーを開くか、ウィンドウ → パレット(Cmd–Opt–P)を選択します。Glyphsの初期状態では、「線幅メモ」、「自動カーブ」、「レイヤー」、「変形」の4つのセクションがあります。プラグインでは、パレットにセクションを追加することができます(16.3「プラグイン」参照)。セクション名の左側にある三角形をクリックすると、セクションを折りたたんだり展開したりできます。
5.1 線幅メモ
線幅メモセクションは、フォントに影響を与えるものではありませんが、一般的なフォントの寸法の特徴を書き留め、参照することができるメモ帳の役割を果たします。数値をクリックするか、空欄(–)をクリックして値を入力します。値はマスターごとに保存されます。フィールドは、グリフに帰属する文字体系に応じて変化します。これは、編集 → 選択グリフのプロパティを編集(Cmd–Opt–I)で変更できます。
5.2 自動カーブ
20%から100%までの自動カーブ
「自動カーブ」セクションは、滑らかな曲率の曲線を作成するのに役立ちます。8つの丸いボタンをクリックすると、選択したハンドルの長さが変わります。左端のボタンは左フィールドで指定された長さのハンドルを設定し、右端のボタンは右フィールドに適合させます。中間の6つのボタンは、ハンドルを均等な長さの間隔に設定します。また、8つのボタンは、Ctrl–Opt–1〜8のショートカットで起動することもできます。
プラスとマイナスのボタンは、選択された曲線セグメントのハンドルの長さを一様に増減させます。曲線にフィット」は、片方のハンドルしか選択されていなくても、常に両方のハンドルに作用します。
ハンドルが選択されると、ボタンの下にある小さなグレーのインジケータが現在のハンドル長を示します。最小値は 1%、最大値は100% です。55%の時が、楕円形や円の曲率に最も近い値です。このような曲線セグメントは、全長にわたって均等に湾曲しているように見えます。ハンドルの長さが長い曲線(55 %以上)は、曲線上の点に向かって平らになっているように見え、線分に接続するのに適しています。柄の長さが短い曲線(55%以下)は、中央が平らで両端が大きく湾曲しているように見えます。
5.3 レイヤー
レイヤーはグリフのアウトラインを含みます。1つのグリフには複数のレイヤーがあり、各マスターに少なくとも1つのレイヤーが存在します。
レイヤーは、パレットの[レイヤー]セクションに表示されます。レイヤーはマスターごとに分類されています。レイヤーセクションの下部にあるハンドルをドラッグすると、サイズを変更できます。レイヤーの横にある目のマークをクリックすると、表示/非表示が切り替わります。表示されているレイヤーは、グリフの別のレイヤーがアクティブになっている場合、薄い水色の線で表示されます。色は環境設定で変更できます(3.2 「外観」参照)。すべての可視レイヤーを一度に編集するには、「すべてのレイヤーを選択」ツール(ショートカット Shift–V)を使用します。現在のレイヤーと表示されているすべてのレイヤーのノードが表示され、同時に操作することができます。詳細は 13.8.1 「全てのレイヤーを選択ツール」を参照してください。Shift キーを押しながらクリックするとレイヤーの範囲を選択でき、Command キーを押しながらクリックすると連続しない選択になります。レイヤを新しい位置にドラッグして、レイヤを並べ替えることができます。レイヤの順序変更は、マスター内でのみ可能です。
グリフでは、マスターレイヤー、バックアップレイヤー、特別なレイヤーの3種類のレイヤーを区別しています。
5.3.1 マスターレイヤー
マスターレイヤーは、インスタンスを補間するために必要です。すべてのグリフには、すべてのフォントマスターのマスターレイヤーがあります。「レイヤー」パレットでは、マスターレイヤーにはマスター名が表示され、太字で設定されています。マスターレイヤーは、レイヤーセクションから追加、削除、名前の変更はできません。その代わり、ファイル → フォント情報… → マスターを開いて、フォントマスターを管理します。
フィルターメニューから「現在のマスターに属するレイヤーのみ表示」を選択すると、現在のマスターに属さないすべてのレイヤーが非表示になります。このオプションは、レイヤーリストをすっきりさせることができ、多くのマスターを持つフォントを扱う際に特に役立ちます。
5.3.2 バックアップレイヤー
バックアップレイヤーは、過去の図面のコピーを保持するために使用します。レイヤーセクションの左下にあるプラスボタンをクリックすると、新しいバックアップレイヤーが作成されます。デフォルトでは、バックアップレイヤーには作成日時が表示されています。レイヤー名をダブルクリックすると、名前が変更されます。マイナスボタンをクリックすると、選択したレイヤーが削除されます。バックアップレイヤーは、マスターレイヤーの下にインデントされ、通常のウェイトで設定されます。グリフはいくつでもバックアップレイヤーを持つことができます。すべてのバックアップレイヤーを隠すには、フィルタメニューから「バックアップレイヤーを隠す」を選択します。
下のアクションメニューから「マスターとして使用」を選択すると、選択中のバックアップレイヤーの内容がマスターレイヤーに配置され、現在のマスターレイヤーの内容は新しいバックアップレイヤーに配置されます。また、バックアップレイヤーをマスターレイヤーの上にドラッグして、マスターレイヤーと入れ替えることもできます。
5.3.3 特殊レイヤー
特殊レイヤーには、補間用の中間レイヤー(ブレースレイヤー)や代替レイヤー(ブラケットレイヤー)、カラーレイヤーなどがあります。特殊レイヤーは、マスターレイヤーの下にインデントされています。ラベルにはその種類が反映され、太字で表示されます。
中間レイヤーと代替レイヤーは、補間の設定で使用されます。詳細については、13「マルチプルマスター」を参照してください。カラーレイヤーは、カラーフォントに使用されます。詳細は14「カラーフォント」を参照してください。プラグインでは、独自の特殊レイヤーを定義することができます。詳細は各プラグインのマニュアルを参照してください。
5.4 変形
「変形」セクションでは、ポイント、パス、コンポーネント、アンカー、ガイドライン、画像などを変形させることができます。次のような変形がサポートされています。
- 選択範囲を水平または垂直に反転したり、選択範囲を拡大または縮小したりします。
- 選択範囲を時計回りまたは反時計回りに回転させます。
- 選択範囲を左、右、下、上に傾斜させます。
- 選択範囲を左、右、上、下に整列させます。
- 選択範囲を垂直方向または水平方向に整列します。
- パスに対してブーリアン演算 (結合、減算、交差) を実行します。
変形は、フォントビューと編集ビューの両方で適用できます。選択した内容に応じて、変形はセグメント、パス、またはグリフレイヤー全体に適用されます。
テキストフィールドの左と右にあるボタンは、逆の変換を行います。たとえば、 反時計回りの丸まった矢印をクリックすると、時計回りの丸まった矢印をクリックしたときの変形が元に戻ります。これらの反対方向の変換は、グリッド間隔による丸め誤差の影響を受けません。グリッド間隔の詳細については、8.5.1「グリッドの間隔とグリッド細分」を参照してください。
5.4.1 変形の基準点
すべての変換(整列を除く)は、基準点を基にして実行されます。変形パレットの一番上の行は、この原点をコントロールします。
変換ボックスは、(左)選択範囲のバウンディングボックスを基準にして、基準点を配置します。4 つのコーナーのいずれか、4 つのエッジの中央、または選択ボックスの中央を基準点として定義できます。
リファレンスポイント(中央)は、拡大縮小ツール(S)または回転ツール(R)で定義された基準点を使用します。いずれかのツールを使って、キャンバス上をクリックして基準点を定義します。基準点は、拡大縮小/回転ツールを使用している場合は赤いリングに十字のマークで表示され、その他のツールを使用している場合は十字のマークで表示されます。
メトリクスポイント(右)は、ファイル → フォント情報… → マスター → メトリクス で定義されたメトリクスのいずれかに基準点を置きます。ベースライン、xハイトの中間または端、キャップハイトの中間または端のいずれかを選択します。CJKグリフの場合は、代わりにレイヤー寸法コントロールが表示されます。このコントロールは基準点をレイヤーの中心(幅の半分、アセンダーとディセンダーの間の中心)に置きます。
5.4.2 反転
反転ボタンは選択範囲を基準点の反対側に反転させます。メトリクスポイントで基準点を定義している場合、水平方向に反転時はレイヤーの水平方向中心を基準にして反映されます。
メトリクスポイントで基準点をxハイトの半分またはキャップハイトの半分に設定してミラーリングすると、オーバーシュートを維持することができます。例えば、xハイトをオーバーシュートするnをミラーリングすると、ベースラインをオーバーシュートするuになります。
コーナーコンポーネント(9.3「コーナーコンポーネント」参照)を反転すると、左コーナーが右コーナーになります。その逆も同様です。グリフコンポーネントを上下逆にミラーリングすると、元のグリフの上下のアンカーの割り当てが逆になります。このように、コンポーネントをミラーリングすることで、上のマークを下のマークとして使用することができます。
5.4.3 拡大縮小
拡大ボタンをクリックすると、選択範囲が指定した割合で拡大されます。100%より大きい割合では選択範囲のサイズが大きくなり、100%より小さい割合では選択範囲のサイズが小さくなり、100%の割合では選択範囲のサイズはそのままになります。水平軸(上の入力フィールド)と垂直軸(下の入力フィールド)の拡大率は、それぞれ独立して定義できます。ロックアイコンがロックされている場合は、上の入力フィールドが両軸に使用されます。
縮小(Reverse Scale、拡大をもとに戻す)ボタンは、拡大操作を元に戻します。これは一般の縮小とは異なります。100%より小さい割合(例えば 75 %)で拡大すると、選択範囲が縮小されます。同じ割合でReverse Scaleを実行すると、選択範囲は元のサイズに戻ります。同様に、拡大で100%より大きな値に拡大された選択範囲は、Reverse Scaleを使って元に戻すことができます。
基準点をもとに120%の拡大を行った場合。
120%の拡大後は、単に80%に縮小しても元に戻りません。もとに戻すためには以下のように縮小する必要があります。
83.3… % (= 100 %/120 %)
このような場合はReverse Scaleが便利です。
5.4.4 回転と傾斜
選択範囲を回転させるには、右へ回転/左へ回転ボタンを使用します。また、左/右/上/下に傾斜ボタンで、選択範囲を傾斜させます。選択範囲をある数値で2回斜めにした場合と、その2倍の数値で1回斜めにした場合とでは、同じ結果にならないことに注意してください。
斜めにすることは、スキューイング(skewing)と呼ばれることもあります。
5.4.5 整列
整列ボタン(左端/水平中心/右端/上端/垂直中心/下端に整列)は、ポイント、完全または部分的なパス、アンカー、コンポーネントに使用できます。整列は、基準点ではなく、常に選択範囲のバウンディングボックスを基準にして行われます。
パス → 選択ポイントを整列 (Cmd–Shift–A) で、選択したポイントを素早く整列できます。このコマンドは、基準点の設定を尊重します。詳細は4.2「パスの編集」を参照してください。
5.4.6 ブーリアン処理
一番下の列のボタン(重なったパスを合体(合体)/選択パスまたは手前のパスを削除(切り抜き)/選択パスまたは手前のパスを残す(差分抽出))は、閉じたパスとブーリアン演算である合体、切り抜き、差分抽出を組み合わせたものです。
左から順に、2つのパスが重なっている状態、合体、切り抜き、差分抽出。
合体は、選択されたすべてのパス (選択されていない場合はレイヤーのすべてのパス) の重なりを取り除きます。切り抜きは、選択されたパスを、選択されていないパスから削除します。一貫した結果を得るために、減算操作に関わるパスは最初に結合されます。差分抽出では、選択されたパスと選択されていないパスが重なった部分だけを残します。切り抜き、差分抽出とも、選択されていないパスがある場合は最前面のパスを選択パスとします。
合体処理は、「重なったパスを合体」オプションを使って、出力時にすべてのグリフに適用することができます。詳細は、15.1.1「OpenTypeの出力」を参照してください。
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