Glyphs3 ハンドブック非公式翻訳 #3 環境設定

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免責事項について

この文章は、Glyphs 3ハンドブックを個人的に日本語翻訳したものです。翻訳の正確性には注意を払っておりますが、誤訳や不完全な解釈が含まれる可能性があります。文章内に誤りを見つけられた場合はご連絡いただけますと幸いです。

主な参考資料

Glyphs3 Handbook(公式PDF)
Glyphs2.3ハンドブック日本語版(旧バージョンの公式日本語版PDF)
Glyphs Handbook(公式WEB)サイト
Microsoft Typography documentation(OpenType仕様関連)
CSSでのOpenType 機能の構文(MDN Web Docsなど)

1. Glyphs 2. 作成 3. 環境設定 4. 編集ビュー 5. パレット 6. フィルタ 7. フォントビュー 8. フォント情報 9. 図形の再利用 10. スペーシングとカーニング 11. PostScriptヒンティング 12. TrueTypeヒンティング 13. マルチプルマスター 14. カラーフォント 15. 読み込みと出力 16. 拡張機能 17. 補足資料(前編後編

3 環境設定

環境設定ウインドウは、メニューバーの「Glyphs」→「設定…」(Cmd,)から開くことができます。
(なお、macOS 13 Venturaより前のバージョンでは、このメニュー項目は「環境設定…」という名称で表示されます。)

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3.1 アップデート

Updates ??? Glyphs Handbook
Control how Glyphs is updated.

アップデート」セクションでは、Glyphsの更新方法を設定します。

  • 手動アップデート:
    今チェックする」ボタンをクリックすると、いつでも手動で新しいバージョンがあるかを確認できます。利用可能なアップデートがある場合は、新しい追加や変更点のリストが表示され、ダウンロードするかどうかを選択できます。
  • 自動アップデート:
    新バージョンを自動的にチェック」をオンにしておくと、新しいバージョンがリリースされた際に通知が届きます。この設定はオンのままにしておくことをお勧めします。
  • ベータ版の利用:
    開発中バージョンも表示」をオンにすると、新機能の先行リリースや、より頻繁なバグ修正を含むベータ版を試すことができます。
    • 注意点: ベータ版は開発中であり頻繁にリリースされるため、安定版ほど十分なテストは行われていません。試用する際は、必ず作業ファイルのコピーを作成してからお使いください。
    • 安定版に戻すには: 公式サイト glyphsapp.com/buy からアプリケーションを再ダウンロードするだけで、いつでも最新の安定版に戻すことができます。
  • 新しいバージョンをダウンロードしたり、Glyphsの古いバージョンに戻したりしても、アプリケーションの環境設定はリセットされませんのでご安心ください。

3.2 外観

Appearance — Glyphs Handbook
Change colors, sizes, and other visual aspects of Glyphs.

外観」セクションでは、フォントビューと編集ビューの見た目をカスタマイズします。

フォントビュー

Unicode値を表示:
Unicode値を持つグリフセルに、シンプルな「U」アイコンを表示するか、コードポイント(例: 0041)を右下に直接表示するかを切り替えます。

常にライトモード:
macOSの表示モードを「ダークモード」に設定している場合でも、フォントビューを「ライトモード」で表示させることができます。

編集ビュー

編集ビュー幅:
編集ビューでテキストを入力する際の1行の長さを制御します。値は1000を1emとする単位で指定されます。フォントのUPM設定とは独立しており、影響を与えません。

ハンドルのサイズ:
オンカーブノード、コントロールハンドル、アンカーといった、アウトライン上のポイントの表示サイズを調整します。小さくすると画面がすっきりし、大きくすると視認性や選択のしやすさが向上します。

発音記号を表示:
アンカーを選択した際に、そのアンカーに結合する可能性のあるすべてのマーク(発音記号など)を、半透明で重ねてプレビュー表示する機能(マーククラウド)です。markフィーチャー(マークのベースへの配置)やmkmkフィーチャー(マークのマークへの配置)が、意図通りに機能するかを視覚的に確認するのに役立ちます。この機能を無効にすると、プレビューは表示されなくなります。
なお、どのアンカーにどのマークが表示されるかは、内部のグリフ情報データベースによって定義されています。(詳しくは、グリフ情報データベースのページを参照してください。)

常にライトモード:
macOSの表示モードを「ダークモード」に設定している場合でも、編集ビューを「ライトモード」で表示させることができます。

カラー設定:
ライトモードとダークモード、それぞれについてインターフェースの各要素の色を細かく設定できます。

  • 設定可能な項目: 
    • コーナーノードの色 
    • スムーズノードの色 
    • アライメントゾーンの色 
    • 前景レイヤーのアウトラインの色  
    • 背景レイヤーのアウトラインの色 
    • その他のレイヤー(レイヤーリストで目のアイコン / をクリックすると表示されるレイヤー)のアウトラインの色 
    • カーニングインジケータの色(デフォルトでは、負の値が水色 、正の値が黄色  )
  • リセット: 「初期化」ボタンをクリックすると、すべての色を初期設定に戻すことができます。

3.3 ユーザ設定

User Settings — Glyphs Handbook
Change how Glyphs behaves.

読み込み元のファイルのグリフ名を保持:
他のフォントファイルを開く際に、Glyphs標準のグリフ名に自動変換せず、ファイルが元々持っていたグリフ名をそのまま維持します。他のアプリケーションとの連携など、特定の命名規則に依存するワークフローで役立ちます。

読み込んだファイルではコンポーネントの自動整列を解除:
他のフォントファイルを読み込む際に、すべてのコンポーネントの自動整列機能を一括で無効にします。(自動整列について詳しくは、9.1.8「自動整列」を参照してください。)

Disable Localization. Please restart Glyphs to take effect.ローカライゼーションを無効化):
macOSの言語設定に関わらず、Glyphsのユーザーインターフェースを常に英語で表示します。変更を有効にするには、このオプションを切り替えた後、Glyphsを再起動する必要があります。

Lion移行の保存仕様を使う(自動保存、バージョン情報あり):
macOS標準のファイル保存機能「バージョン」を有効にします。これをオンにすると、Pagesなどのアプリと同様に、ファイルの自動保存や過去のバージョンへの復元が可能になります。オフにすると、ファイルを開いたり閉じたりする際の自動保存は行われなくなります。

3.4 サンプルテキスト

Settings: Sample Strings — Glyphs Handbook
Define text samples for quick access in Edit View.

ここでは、編集ビューでグリフの確認や編集に使うサンプル文字列を登録・管理します。

サンプル文字列は、複数のグループに分けて整理できます。左側のリストでグループを選択し、+ / – ボタンでグループの追加・削除を行います。グループはドラッグして並べ替えることもできます。

右側のテキストフィールドに、1行につき1つのサンプル文字列を記述します。

サンプル文字列の書式

このテキストフィールドでは、特殊な記法を使って柔軟に文字列を定義できます。

  • 直接入力:
    キーボードから直接文字を入力します。Unicodeに対応しており、アクセント記号なども入力可能です。
  • グリフ名で指定:
    /グリフ名 の形式で、特定のグリフを直接指定します。Unicode値を持たないグリフ(例: 合字)や、キーボードから入力しにくいグリフを指定するのに便利です。
    • 例: /A.sc /f_f_i
    • 注意: グリフ名の後には通常スペースが必要ですが、グリフ名が続く場合は省略できます。(例: /H/o/l/a)
  • 改行:
    \n (バックスラッシュ + n)を入力すると、その場所で改行されます。
  • プレースホルダー:
    /Placeholder と入力すると、その場所に現在編集中のグリフが動的に表示されます。前後の文字との繋がりを確認するのに非常に役立ちます。

記述例

「¡Hola!」と表示し、その後に現在編集中のグリフ、さらに改行して「second line」と表示させたい場合、以下のように記述します。

/exclamdown Hola/exclam /Placeholder\nsecond line

リセット

+ / – ボタンの隣にある「…」のアイコンから「初期状態に戻す」を選択すると、すべてのサンプル文字列が初期設定に戻り、独自に作成したグループはすべて削除されます。

出力と読み込み

+ / – ボタンの隣にある「…」のアイコンをクリックすると、メニューが表示されます。

出力: 現在のサンプル文字列のセットを、.plistファイルとして書き出して保存できます。

読み込み: 保存した.plistファイルを読み込み、設定を復元できます。これにより、複数の環境で設定を共有したり、バックアップを取ったりすることが可能です。


【参考】
サンプルテキストの詳しい使い方については、4.9.2「サンプルテキスト」もあわせてご覧ください。

3.5 編集ビュー共有

Sharing — Glyphs Handbook
Preview fonts on iPhone and iPad.

このセクションでは、編集中のグリフをiPhoneやiPadなどのiOSデバイスにリアルタイムで表示(ストリーミング)する、「外部プレビュー」機能の設定を行います。

設定と使用手順

  1. 準備:
    • Mac側で「外部プレビューを有効化」にチェックを入れます。
    • iPhoneやiPadに、App Storeから「Glyphs Viewer」アプリを検索してインストールします。
    • MacとiOSデバイスが、必ず同じWi-Fiネットワークに接続されていることを確認してください。
  2. 接続:
    • iOSデバイスで「Glyphs Viewer」アプリを開き、リストに表示されたMacをタップします。
    • Mac側で、接続を許可するかどうかの確認ダイアログが表示されるので、「許可」します。
  3. プレビューと操作:
    • 接続が完了すると、Glyphs上で現在アクティブな編集ビューの内容が、リアルタイムでiOSデバイスに表示されます。
    • Macでグリフを編集すると、その変更が即座にiOSデバイスに反映されます。
    • iOSデバイス上では、2本指のピンチ操作でズーム、1本指のドラッグでパン(表示位置の移動)ができます。
    • iOSアプリの画面を長押しすると、接続先の選択メニューに戻ります。

トラブルシューティング:接続できない場合

Glyphs ViewerアプリがMacを見つけられない場合は、以下の点を確認してください。

  1. ネットワークの確認:
    MacとiOSデバイスが、本当に同じWi-Fiネットワークに接続されていますか?
  2. デバイスの再起動:
    両方のデバイスを再起動してから、もう一度試してみてください。
  3. ネットワークの変更またはルーター設定の確認:
    • 可能であれば、別のWi-Fiネットワークで試してみてください。
    • ルーターが複数の無線規格(例: 802.11g と 802.11n)を同時に使用する設定になっていると、接続に失敗することがあります。その場合は、ルーターの設定をどちらか一方の規格(例: 802.11n のみ)に固定することで、問題が解決する場合があります。

信頼できるデバイスのリセット

一度接続を許可したデバイスは「信頼できるデバイス」として記憶されます。このリストをリセットしたい場合は、設定画面に表示される「リセット」ボタンをクリックしてください。

3.6 アドオン

Addons — Glyphs Handbook
Change the Python version and define additional plugin sources.

Glyphsは、プラグインマネージャーからインストールできるプラグイン、スクリプト、モジュールによって機能を拡張できます。この「アドオン」セクションでは、それらの拡張機能がどのように動作するか、また、どのような拡張機能を利用可能にするかを設定します。

ほとんどのGlyphsプラグインやスクリプトは、プログラミング言語であるPythonを必要とします。

Pythonは、書体デザイナーやフォントエンジニアに人気のプログラミング言語です。Python言語は現在も開発が進められており、新機能を搭載した新バージョンが定期的にリリースされています。プラグインやスクリプトによっては、特定のPythonバージョンを必要とするものがあります。

3.6.1 Python バージョン

  • Pythonバージョン:
    このドロップダウンメニューから、Glyphsがプラグインやスクリプトを実行するために使用するPythonのバージョンを選択します。プラグインによっては特定のバージョンが必要になる場合があります。なお、GlyphsはPython 3以降を必要とします。
  • Pythonがインストールされていない場合:
    適切なPythonバージョンが見つからない場合は、「ウィンドウ」→「プラグインマネージャー」を開き、「Pythonモジュール」タブからPythonをインストールしてください。その後、この設定画面に戻り、「(Glyphs)」とラベルが付いたバージョンを選択します。
  • 設定の反映:
    Pythonのバージョンを変更した場合は、Glyphsを再起動すると設定が反映されます。

3.6.2 コンソール出力

  • Pythonスクリプトのテキスト出力にシステム標準のコンソールを使う:
    このオプションをオンにすると、プラグインやスクリプトのログ出力先が、Glyphsの「マクロパネル」(「ウィンドウ」 → 「マクロパネル」(CmdOptM))から、macOS標準の「コンソール」アプリに切り替わります。マクロパネル自体に問題が発生している場合など、プラグインのデバッグを行う際にこのオプションを選択します。

3.6.3 代替のプラグインリポジトリ

プラグインマネージャーに表示される拡張機能のリストは、「リポジトリ」によって定義されています。Glyphsには、すべてのGlyphsユーザーがアクセス可能な、人気の拡張機能を集めた公式のメインリポジトリが標準で設定されています。

ここでは、そのメインリポジトリに加えて、独自の拡張機能リスト(代替リポジトリ)を登録できます。

登録方法:
代替リポジトリの定義ファイル(JSON形式)を指すURLを、テキストフィールドに1行に1つずつ追加します。

Glyphsは、HTTPS上のHTTP Basic認証による代替プラグインリポジトリのURLをサポートしています。リポジトリへのアクセスにはユーザー名とパスワードが必要となります。

ローカルファイルのリポジトリも、URLの代わりにファイルのフルパスを入力することでサポートされます。

主な用途:

  • 開発中のプラグインのプレビュー版を配布する。
  • 企業やチーム内だけで使用する、プライベートなスクリプトやプラグインを共有する。

リポジトリ定義ファイルの構造:
代替リポジトリの定義ファイルは、以下のようなJSON形式の構造に従う必要があります。

基本的な構造例:

{
  packages = {
    plugins = (
      {
        titles = {
          en = "Some Plugin";
        };
        url = "https://github.com/example/plugin";
        path = "Some Plugin.glyphsPlugin";
        descriptions = {
          en = "A description of the plugin.";
        };
        screenshot = "https://example.org/image.png";
      },
      ...
    );
    scripts = ( ... );
    modules = ( ... );
  };
}

リポジトリ定義ファイル(JSON形式)を記述する際の、主な仕様とヒントです。

  • 必須項目:
    ファイル構造の完全な詳細や利用可能なすべてのフィールドについては、Glyphsの公式メインリポジトリを参照してください。ただし、実際に定義する必要があるのは、配布したい拡張機能のカテゴリ(plugins, scripts, modules)のみです。例えば、スクリプトのみを配布する場合は、pluginsやmodulesの項目は省略できます。
  • 多言語対応:
    titles(タイトル)とdescriptions(説明)のフィールドには、複数の言語での記述が可能です。これにより、ユーザーのGlyphsの言語設定に応じて、適切な言語で拡張機能の情報が表示されます。(使用可能な言語コードの一覧は、パッケージインデックスのウェブサイトを参照してください。)
  • ローカライズされたスクリーンショット:
    screenshotのURLを要求する際、Glyphsはユーザーの言語設定を伝えるAccept-Language HTTPヘッダーを送信します。これにより、サーバー側で言語を判別し、ローカライズされたスクリーンショット画像を出し分ける、といった高度な対応も可能です。

3.7 ショートカット

Shortcuts — Glyphs Handbook
Define custom keyboard shortcuts for common actions.

このセクションでは、頻繁に使う操作に対して、独自のキーボードショートカットを割り当てることができます。ショートカットは、修飾キー(⌘: Command, ⌥: Option, ⌃: Control, ⇧: Shift)と、文字や数字、Returnキーなどを組み合わせて作成します。

ショートカットの登録と削除

  1. リストから、ショートカットを割り当てたい操作(アクション)を選択します。
  2. 右側の「割り当てる」と表示されているフィールドをクリックします。
  3. キーボードで、割り当てたいキーの組み合わせを実際に押します。
  4. 登録したショートカットを削除したい場合は、×アイコンをクリックします。変更を元に戻したい場合は、↩︎アイコンをクリックします。

登録されたショートカットは、Mac標準のキーシンボル(例: ⌘, ⌥)で表示されます。

アクションリストの絞り込み

リストに表示されるアクションは、以下の方法で絞り込むことができます。

  • フィルタボタン:
    ウィンドウの上部にあるボタンで、表示するアクションの種類を切り替えられます。
    • すべて: すべてのアクションを表示します。
    • カスタム: 独自のショートカットが割り当てられたアクションのみを表示します。
    • メニュー: メニューバーに表示される項目のみを表示します。
    • コマンド: ツール選択時など、特定の状況(コンテキスト)に応じて利用可能になるアクションを表示します。
  • セクションの開閉:
    アクションは「ファイル」「編集」などのセクションごとにグループ化されています。セクション名の横にある  をクリックすると、そのセクションを開いたり閉じたりできます。
  • 検索:
    右上の検索フィールドに操作名(例: 複製, 合体)を入力すると、リストをさらに絞り込むことができます。

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コメント

  1. フォント好き より:

    「読み込んだファイルではコンポーネントの自動整列を解除」の設定に悩んでいました。チェックを入れると自動整列するの?しないの?。
    たぬき侍さんの和訳されたハンドブックを読んで理解できました。ありがとうございます。

    • tanukizamurai より:

      コメントありがとうございます、励みになります😂
      お役に立てたなら何よりです!

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