ふちどり文字にできるトゲから、マイター結合の「比率」について深掘りする

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Illustratorで、オブジェクトや文字に対してふちどりを作ったことがある方なら、おそらく一度は見たことがあるのでは!?

そう!「トゲ」です!

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そもそも、どうしてこんなところに「トゲ」が?

なぜか突如として姿を表すこのトゲ。

手っ取り早くふちどり文字を作ろうと、下のレイヤーに太めの「線」を設定したテキストを配置
そして全く同じ文字をその上に重ね、「線」の幅を0にしてしまえばハイ完成……!と思ったら。

なぜか唐突にこのようなトゲが現れるわけです。

どうせフォントのバグか、もしくは画像編集ソフトのバグなんだな

……などと(昔の私のように)思っちゃう方もいるかもですが、実はこれ、仕様です

そしてこれは避けようのない仕様ではなく、例えばAdobe llustratorなどでは、ふちどり文字の作り方を工夫することで解決できるのです。

ということで、まずはこのトゲの発生原理を、少し掘り下げて解説します…

トゲの犯人は「極端なマイター結合」

いきなりですがトゲの犯人を告発します。

犯人は、下の図の黒丸部分だーー!

黒丸がついている部分。文字の形の中に存在する、強い鋭角(例えば約45°以下)が犯人です。

トゲの発生箇所を見ると、どのトゲにも共通して、トゲの後ろ側に鋭角に折れ曲がっているパス(黒丸部分)があることがわかります。その尖ったパスが「トゲ」を作ってしまうような角度(鋭い鋭角)になっていること。これがトゲ発生の原因です。

上図のアニメーションで、アウトラインの線幅を徐々に大きくするにつれ、向こう側の平らなパスを突き破ってまるでタケノコのように成長するトゲを確認できます。

マイター結合・ラウンド結合・ベベル結合の比較

Illustratorなどでは、このトゲ部分は「マイター結合」という結合方法で処理されているはずです。線の設定パネルの「角の形状」というところに3種類のアイコンが表示されていますが、この一番左のアイコンが「マイター結合」です。真ん中は「ラウンド結合」、右は「ベベル結合」と呼ばれる結合方法です。

それぞれ3種の結合方法について簡単に説明します。

マイター結合は、角度がきつくなるほど、外に飛び出す性質があります。

それぞれの結合方法について角度別に比較してみると、ラウンド結合の飛び出し量は線幅(グレーの縦帯)と一致しますが、マイター結合では飛び出し量が大きく、逆にベベル結合では小さくなることがわかります。

マイター結合の暴走を防ぐ「比率」の設定

マイター結合の尖った感じはとても良いけれど、あまりに外に飛び出すのはちょっとなぁ……というときのために、「比率」という設定項目が用意されています

この設定が使用できるのはマイター結合のみです。ラウンド結合やベベル結合のときはグレー表示になってしまいます。

「比率」とは、どこまでマイター結合を許容するかのしきい値を、マイターの長さに対する比率(倍数)で示すための設定値です。数値は1〜500までの数値を入力することが出来ます。意外に盲点かもですが、実は小数点以下の数値も入力可能です。

例えばマイター結合の「比率」を「4」にした場合の、角度によるマイター結合の変化を見てみましょう。

マイター結合の角が赤線(比率4)のラインにかかるあたりでの変化に注目してください。

このようにマイター長が比率4のラインを超えた瞬間、マイター結合からいきなりベベル結合に切り替わっていることがわかります。

ちなみに、比率4の場合なら、角度が約30°以下でベベル結合への変換が行われます。

ここで最初のトゲの話に戻りますね。

比率nと角度θの関係から、比率nの数値を下げれば角度θの値は大きくなることがわかります。
つまりnの数値を下げることで、より鈍角でトゲを「折ることができる」ようになります。
「比率」で設定した角度より鋭角なトゲのマイター結合はベベル結合に切り替わり、トゲが折れるのです。

つまり、トゲが出てほしくないときは、比率の数字を小さくすればいいのです。

(余談ですが、個人的にはいきなりベベルに置き換わるのではなく、マイター結合で4のラインより飛び出た部分だけ徐々にカットしてくれるような設定もほしいな、と思ったり……)

ちなみに比率に設定できる最小値は1ですが、1を指定した場合は「180度以下の角がベベル結合になる = すべての角がベベル結合になる」という意味になってしまいます。比率に1を入力するのであれば、マイター結合ではなくベベル結合を選んでも同じ意味になります。

比率でトゲを消すことの問題点

上の方でトゲの発生していた文字たちは、比率の数値を「2」に設定することで無事にトゲを消すことが出来ました。

しかしながら実は、残念ながら比率の変更だけでは対処出来ない場合もあります。

例えば、以下の図のような形のオブジェクトにふちどりを線でつけようとします。発生したトゲを消すために比率の数値を下げていくと、その過程で消したいトゲが消える前に、消えてほしくない角の部分が消えてしまいます

ラウンド結合にすれば飛び出しを抑えることができるため、トゲを消すことは出来ますが、これだと求めるイメージと印象が変わってしまうかもしれません。

角度で一律にトゲを消す・消さないの判断をしないといけない状況では、すべてのパターンに十分に対応するのは難しいようです。

トゲの解決策。ふちを「線」で作るのをやめる

トゲが発生する条件には、主に下の3つの要素が関係します。

(1)ふちどり枠をつくるために、テキストの「線」の線幅を利用

(2)線のプロパティで「角の形状」に「マイター結合」を選択

(3)マイター結合の「比率」の数値が大きい(概ね4以上〜)

ここまでで、(2)の「結合方法」、(3)の「比率」についていろいろ考えてみました。
しかし結局のところ万能の解決策はなさそうです。

結局、トゲを消したかったら。

(1)の、「線」の線幅でふちどり枠を作るのを、止めてしまえばいいのです。

アピアランス設定で「トゲ」は消せる

線幅を使わずにトゲを消す方法の中で一番おすすめの方法は、アピアランスパネルから下に「塗り」を追加する方法です。

既存の塗りの下にもう一つ塗りを追加して、その塗りの境界線を「パスのオフセット」を使って外側に広げてしまう方法です。この方法であれば内側から突き刺してくるようなトゲは発生しません。

まとめ兼つぶやき

ということで、無事にトゲを消すことができました。

まあ、トゲがイヤなら最初からアピアランス使えばいいんです、って話ではあります。

でも、初心者の頃には多くの人が遭遇したんじゃないかな〜と思う、このトゲ問題。

このトゲ問題を通じて、なんとなく流し見していたマイター結合の「比率」についていろいろ調べて知ることができたのは、個人的にとても良い経験になりました。

高校の時に一生懸命サインコサイン勉強したのがちょっとだけ役に立って嬉しかったので、こんな記事にしてみました。

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